大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(ネ)2594号 判決

然しながら、既に説示したところに徴すれば、前記確定判決により被控訴人が前記建物収去、土地明渡を命ぜられると共に、控訴人も亦、訴外村上愛三郎に対し本件土地を含む前記宅地百三十八坪につき同訴外人が賃借権を有することが認められ、右宅地の引渡を命ぜられたのであり、その結果被控訴人は控訴人から設定を受けた賃借権に基いて本件土地の使用収益ができなくなり、控訴人は結局当初から被控訴人のため本件土地を完全に使用収益させるに足る賃借権の設定をすることが不能な状態に立ち到つたのであるから、かかる場合控訴人は訴外村上愛三郎から本件土地の賃借権を譲り受けるか又は右賃借権を消滅させるなどして被控訴人をして本件土地の完全な使用収益ができる借地権を取得させ、被控訴人に対して設定を約した前記賃借権の瑕疵を補うべき担保義務を負うに至つたものというべきである。然るに控訴人は前記判決確定後もかかる措置をとらなかつたため、被控訴人は止むなく訴外村上愛三郎との間において示談契約をなし、前記金員の支払をして同訴外人の有する本件土地の賃借権を譲り受け、前記確定判決に基く強制執行を免れたのであるから、他に特段の事情の認められない本件においては、被控訴人のとつた右措置は右強制執行により被る損害を避けるため止むを得なかつたものとして蓋し相当な措置であり、且つ、控訴人としても被控訴人においてかかる措置をとることが必ずしも予見し得ないところではなかつたものと考えられる。又被控訴人において右措置をとる前予め控訴人に諮るところがなかつたからといつて直ちにこれを相当でないということはできない。

而して成立に争のない乙第七号証の記載と原審における証人玉井省吾の証言並びに被控訴人の本人尋問の結果によれば、被控訴人は控訴人から本件土地を賃借するに際し、本件土地につき他に権利者があるかどうかを確めたところ、控訴人の代理人吉田善八は他に権利者がなく更地である旨を告げたので、これを信じて賃借するに至つたことが認められるから、被控訴人は善意の賃借人であるというべく、又当審における鑑定人立花寛の鑑定の結果を参酌すれば、被控訴人が訴外村上愛三郎から本件土地の賃借権を譲り受けた当時における右賃借権の価格は金十六万円を下らないものであつたと認めるのが相当である。記録を精査しても右認定を覆すべき特段の証拠は見当らない。

(渡辺葆 牧野 野本)

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